広がる市場規模で結婚相談所の競争率が上昇?

近年の日本では、未婚化、晩婚化が進んでいますが、それゆえに、結婚相談所をはじめとした婚活サービスといわれる業態の多様性が拡大しています。昔ながらの仲人型・結婚相談型はよりきめ細かなサービスを提供するようになり、ITを利用したデータマッチング型、インターネット型の結婚相談所も増えています。また、特別な資格や設備が必要ないことから新規に個人事業主として結婚相談所を起業する人も増えています。さらに婚活パーティーを主催する会社や、恋活などのいわゆる出会い系まで登場し、「婚活・恋活」市場の競争率は高まる一方です。

結婚相談・結婚情報サービスの需要

1970年代には25歳~29歳の女性の未婚率は18.1%だったのに対し、2000年には54.0%まで上昇しました。それまで30歳未満の女性の約80%が結婚していた時代から、半数以上は独身という時代に変わりました。

また、男性についてはさらに未婚率の上昇幅が高いです。1970年には30歳~34歳の未婚率は11.7%でしたが、2000年には42.9%に上昇しました。34歳未満の未婚率が3.6倍となっており、男性も未婚化、晩婚化が進んでいます。

ライフスタイルが多様化

こうした晩婚化に伴う少子化、女性の社会参加率の上昇や男女参画機会の均等化などにより、女性の生き方は以前に比べてとても自由度が増しました。これまでの日本では女性は早くに結婚して当たり前、またはそれが良いことであるという考え方が大半を占めていましたが、女性は結婚するか、しないかを選択することができるという考え方が浸透してきています。

それと同時に近年では「草食男子」という言葉に代表されるように、結婚の必要性や重要性を感じない男性も増えているというデータもあります。生き方の自由が叫ばれるとともに、結婚や子供を持つことに対するマイナスイメージの考え方も度々目に入るようになりました。

また、男女それぞれのライフスタイルが多様化したということは、経済状況も様々です。結婚に踏み切れない理由として、経済的な理由をあげる人も少なくありません。アルバイトやパート、派遣など雇用形態が増えていますが、こうした雇用形態にあるほど、結婚したくても踏み切れないという原状があるようです。

適当な相手に巡り合わない

さらに、国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った調査によると、25~34歳の未婚男女が結婚できない理由として、「適当な相手にまだ巡り合わない」が半数近くを占めます。これまでの日本では結婚できなくてもお見合い話が家族や親類から持ち込まれ、またそれを断るということが簡単にできる時代ではなかったと思います。加えて、今よりも結婚は幸せへのゴールであるという考え方も多かったのではないでしょうか。また、インターネットの発達によるグローバル化で、日本と世界、日本の昔と現在との比較も容易に行えるようになりました。これも価値観を多様化させる一因となっています。

このように、選べる選択肢が多い時代になった結果、様々な状況下で結婚にすぐに踏み切ることができない男女が増えているのです。理想の相手に巡り合わないということは、巡り合わせてくれるサービスへの需要が高まるのは必然といえます。さらに、今はインターネットを利用することによって、知人や友人の範囲や地域などの制限を超えて様々な人と出会うことができます。

婚活サービスの需要

具体的に婚活サービスの需要に関するデータを上げてみます。ブライダル総研が2017年に行った調査によると、婚活サービスを利用して結婚した人は調査人数全体の10.4%にのぼりました。2013年頃までは5%程度で推移していましたが、この4、5年で利用者が約2倍になっていることが分かります。

中でも利用率の上昇が大きかったのは「婚活サイト・アプリ」で、ネット系の婚活サービスが利用者の増加を押し上げています。さらに、独身者への調査でも、婚活サービスを利用したことのある人は調査人数全体の18.1%であり、こちらも過去最高の人数とのことでした。このような婚活サービスへ対する需要に応える形で、結婚相談所をはじめとする婚活サービスは増加傾向にあるといえます。

国や自治体の参入で敷居が下がった?

婚活サービスのもうひとつの大きな動きとして、国や都道府県、市町村などでも、婚活サービスを提供する自治体が増えているということがあげられます。2015年の時点で、結婚、妊娠・出産、子育てに対する助成や取り組みを行っている自治体は全体の45.9%に登っています。また、出産や育児に対する取り組みだけでなく、婚活パーティや自治体による男女のマッチングサービスを提供するケースが増えています。

こうした結婚支援の領域に自治体が取り組むことによって、結婚に対する関心が下がっている現状において一定の効果が上がるのではないかと予想されます。こうした婚活サービスを利用するということについては、「結婚できない人がするものである」、または「利用費が高い」などのマイナスイメージが一定数あるのに対し、自治体主導のサービスは利用する敷居が低く、また費用も国から助成されているため一般的な民間の結婚相談所よりも安い傾向があります。こうした理由から、婚活サービスを利用することに引け目を感じている層に対してもよりサービスを利用しやすい環境が整うようになってきました。

現状は結婚相談所の事業主とユーザー側どちらにとっても、ビジネス参入やサービスの利用に参加しやすい状況と考えられます。

婚活サービスは玉石混交の時代

このように婚活サービスの市場規模が増加、多様化している現状、様々な種類のサービスを提供する結婚相談所が増えています。

仲人・結婚相談型

従来の結婚相談所では主に書面などによる異性の紹介と、お見合い機会の設定及び立ち会い、交際や成婚に至るまでのフォローアップが主なサービス内容でした。こうしたサービスは「仲人・結婚相談型」と呼ばれています。

データマッチング型

現在ではインターネットによるマッチングを行う「データマッチング型」の結婚相談所が増えています。コンピューター上で管理された会員データを、様々な条件で会員が検索することができるシステムです。仲人・結婚相談型と比べて活動時間などの自由度が高く、圧倒的に会員数が多いのが特徴です。登録の際に年収、学歴や独身証明書などの個人情報の提示を求められる点は仲人・結婚相談型と同じです。各会員へのフォローについては、データマッチングや会員同士のやりとりはサイト上で管理されますが、希望した相手へのデートや交際の申し込み、連絡先の交換等まで全て会員が自ら行う形態が多くなっています。

インターネット型

また、単に「インターネット型」と呼ばれる結婚相談所もあります。データマッチング型と異なるのは、無料で登録でき、結婚を意識したユーザーが自主的にやりとりを行うサービスです。気軽に登録できることから、会員数はさらに多くなる傾向にあります。ただし、登録にあたって独身証明書や収入証明、住民票や運転免許証などの身分証明が必要ないため、掲載されている情報の信頼性は前述のサービスよりは低い傾向があります。このためいわゆる「出会い系」のようなサイトに分類されたり、サクラや悪質ユーザーなどを見分け難いというデメリットもあります。

経営の形態

結婚相談所のサービスの面から見てきましたが、経営の形態も多様です。こうした結婚相談・結婚情報サービスの事業者は、75%が個人事業主、個人経営というデータがあります。日本結婚相談所連盟日本仲人協会といった婚活サービスに関わる団体も多く存在し、個人でもこうした団体から起業のサポートを受けることもできるようになっています。さらに初期費用などの起業コストが比較的安価なこと、特別な資格やロイヤリティが必要ないことなどから、個人事業主を始める一歩として結婚相談所を選ぶ人が増え、またインターネット上でもメリットを挙げて起業を促す風潮もあります。

こうした理由から結婚相談所のサービスは厳しい競争にさらされていると言えます。現在は結婚だけでなく会員のライフサポート、人生設計を考えるサポーターとしての結婚相談所が求められており、業界全体で経験豊富な人材の育成が急務となっています。

事業主側、ユーザー側それぞれのメリット・デメリット

結婚相談所や婚活サービスの増加や多様化は、事業主側、ユーザー側にそれぞれメリット・デメリットがあります。

事業主

まず事業主側から見ると、成功すれば低コストでハイリターンという事業を展開していくことができます。玉石混交の時代で自分のカウンセラーとしてのスキルや経営手腕が問われるので、非常にやりがいのある仕事と言えます。少子化や晩婚化を改善できるという社会貢献感のある仕事でもあります。しかし、多くのライバルがおり高い競争率の中で継続的に売上を上げていくことは厳しい道のりになることもあるでしょう。従って、集客方法やサービスの充実、従業員のスキルアップなど多方面でのフォローが必要不可欠です。

ユーザー

ユーザーにとっては様々な選択肢を検討できることが最大のメリットです。これまでの結婚相談所の少し堅いイメージから、インターネットを利用した手軽なサービスを求める人もいるでしょうし、逆に情報が多すぎるからこそ、しっかりとマンツーマンで相談したいという人もいるでしょう。結婚を希望する様々な人のニーズに応えることができるという点です。逆に、このことが情報の取捨選択をしっかり行わなければならないというデメリットにもつながります。

まとめ

インターネットの台頭により、昔ながらの結婚相談所や親族・職場によるお見合いのセッティングなどは徐々に減少しています。その代わりに低コストで起業できるインターネット型の結婚相談所や婚活サービスが増加しています。旧来の結婚相談所が減少している、晩婚化が進んでいるといっても、選択肢の多い現代だからこそ、結婚相談やマッチングサービスを利用してみたいと考える人が増えているのだと思います。

こうした時代の流れの中で、新しい形態の婚活サービスが日々誕生しています。広がる市場規模の中で、トラブルに巻き込まれないためにも、適切な情報を取捨選択し、信頼できるサービスを利用することが大切です。